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ノビル(野蒜) ユリ科|ネギ属

ノビル
撮影日:2011年5月31日|場所:千葉県習志野市谷津干潟

ノビルをみると、子供の頃、赤川の土手にノビルを取りに行ったことを思い出します。戦後の食糧難の時代で、ノビルと言わず、カンゾウとか、イタドリ、スベリヒユなど、今考えればとても食べられそうにない野草まで取ってきて食べたものです。
中でも、このノビルの球根(鱗茎)は生味噌をつけて食べると非常に美味で、今ならビールのつまみにちょうどいいのではないかと思うくらいでした。
調べて見ると、ノビルはちょっと面白い草で、秋に20〜30cmほどの細い葉を出して、秋から春まではそのまま直立し、花茎が出る5月頃になると、葉は垂れた状態になり、高く伸びた花茎の先端にネギ坊主状の花をつけます。
夏になると地上部は枯れ、夏眠するのだそうです。
さらに面白いのは、ネギ坊主状の中には当然花の蕾が入っていると思われるのですが、これが実はそうでもなくて、中には、花の蕾のほかにこげ茶色のムカゴというものが入っているのです。
ネギ坊主の皮がむけると、ムカゴとそのムカゴの隙間から白く小さな蕾が出てきて、花を咲かせます。種子は作らないようで、ムカゴがばらまかれて繁殖するようです。
私が子供のころに過ごした雪国では、雪の下でどうやって冬を過ごしているのでしょうか。また、同じネギ属のニラなどはムカゴを作らないのに、何のためにムカゴを作るのか、子供のころから見慣れている、こんなノビルの様な雑草にも不思議はたくさんあるんですね。

<2011年6月6日>
間違いやすい草に、同じネギ属のニラがあります。にらは野菜として食用にしていますが、最近は道端などに自生しているのをよく見かけます。ひょろひょろと伸びた細く長い花茎、白い小さなネギ坊主などはノビルにそっくり、ただ、ニラはムカゴをつけないので、花が咲いているのを見ればすぐに区別できます。

ノビル ▲ノビルの茎と蕾。

  ニラ ▲ニラの茎と花。

ノビル ▲ノビルの花とムカゴ。   ニラ ▲ニラの花。

 
ノビル・メモ
■ノビルの特徴
ノビル ▲ノビルの花序部(ネギ坊主)
ノビルの花序部は、先のとがったまずネギ坊主の様な形を作ります。よく似たニラの花序部は、大きさなどは似ていますが、もう少し細長くなります。
ノビル ▲花の蕾
ネギ坊主の皮が破れて、花の蕾が現れ、続いてムカゴが現れます。
ノビル ▲蕾とムカゴ
ネギ坊主の皮が破れて、花の蕾が現れ、続いてムカゴが現れます。
ノビル ▲ムカゴ
花がなく、ムカゴだけの場合もあるようです。また、花が散った後もムカゴが残っていて、このまま、ムカゴから芽を出していることもあります。