キツネノカミソリ(狐の剃刀)

ヒガンバナ科|ヒガンバナ属
キツネノカミソリ
撮影日:2010年8月05日|場所:千葉県泉自然公園
数年前までは、毎年、8月のお盆の前の週末には、キツネノカミソリの花を見に千葉県の泉自然公園に行くのが恒例になっていましたが、病気で体調を崩してからは、この写真を撮った2010年の8月に訪れたのが最後になっています。
泉自然公園のキツネノカミソリは林の中や斜面の草地に群生し、一斉に開花するので、とても見ごたえがあり圧倒されるのですが、なぜか週末にもそれほど混雑することはありませんでした。(今はどうなんでしょうか?)
2010年は、特に花の数が多く道にもはみ出して咲いていました。それに天気にも恵まれたため、木漏れ日がスポットライトのように花に降り注ぎ素敵なシーンを演出、忘れられない日となりました。
キツネノカミソリに初めてであったのは、2002年、千葉県の昭和の森公園で、たった一輪の花でしたが、そのときの衝撃が忘れられず、たまたまネットで泉自然公園にも咲いていることを知ったときは、驚喜したものです。
昭和の森公園での出会いについては、「野の花日記」の「キツネノカミソリ」という項に詳しく書いています。
キツネノカミソリ
▲林の木漏れ日の中に咲くキツネノカミソリ。
キツネノカミソリ
▲キツネノカミソリの群生。
キツネノカミソリ
▲林道で木漏れ日のスポットを浴びています。
キツネノカミソリ
▲雄しべと雌しべが常に上を向いています。
花も生え方も非常に特徴的で、ヒガンバナにとてもよく似ていますが、それもそのはず、ヒガンバナ科ヒガンバナ属で同じ仲間です。
どうしてこんなユニークな名前かというと、春先に出てくる葉が細く鋭い形をしていることからまずカミソリを連想したということで、そのことはほとんどの本などに書いてあります。
それではなぜキツネなのかというと、キツネの住んでいそうな場所に生えるからとか、何もないところから突然茎が出てきて花が咲く様子が、キツネに化かされているようだからとか、諸説いろいろあって、はっきりしたことはわかりません。
葉は春先に出てきますが、夏にはいったん枯れて、何もないように見えるところから茎を伸ばし数輪の花をつけます。私はまだその葉を見たことがありませんが写真で見ると水仙の葉のような形をしています。
キツネノカミソリは、4〜5cmのイチジク型の球根(と種)で繁殖しますが、球根はヒガンバナと同じで毒性があり、そのままで食べることはできません。

キツネノカミソリ・メモ

■キツネノカミソリの特徴

キツネノカミソリ
▲キツネノカミソリの花
キツネノカミソリ
▲キツネノカミソリの雄しべと雌しべ
日本の本州、四国、九州および朝鮮半島に分布する多年生草本球根植物。早春に細長い葉を球根から直接生やし球根を育て、他の草が生い茂る夏には一旦葉を落とします。
お盆の頃には、葉のない花茎だけを 30?50cm ほど伸ばし、数個に枝分かれした茎の先に数輪のオレンジ色の花を付けます。
花は、長さ約6cm、直径約4cm。花びらは根元から6つに別れ、斜めに細く伸びてわずかに反り返ります。
雄しべは、花びらとほぼ同じ程度まで伸びなぜか中ほどから上を向いて曲がります。雌しべは、雄しべよりも少し長く、やはり途中から上を向いて曲がります。
クマツヅラ
▲キツネノカミソリの蕾
クマツヅラ
▲1本の茎に4〜5個の花を付ける
種の写真は撮っていませんが、1.5〜2cm弱の3室に分かれた小さいにんにくのような形の緑色の果実を付け、それぞれの室に1〜2個の5〜7ミリの丸く黒い種を内蔵しています。

■キツネノカミソリ豆知識

キツネノカミソリなどヒガンバナ属の起源はアジアの西の乾燥地にあって、さらに時代をさかのぼると、地中海沿岸が故郷のスイセン属など同じグループだった可能性が高いのです。
どうやら、ヒガンバナ属が鱗茎を作って夏に休むライフサイクルは、夏の乾きがきびしい地中海性気候に適応した先祖の性質を、そのまま残したもののようです。
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