●フキノトウ03.01.25
●サザンカ02.11.24
●カヤ02.10.13
●クルミ02.09.28
●ホオズキ02.09.23
●アキグミ-202.09.23
●アキグミ-102.09.08
●コスモス02.08.31
●サルスベリ02.08.23
●トキワハゼ02.08.20
●ネムノキ02.08.18
●コウホネ02.08.13
●キツネノカミソリ02.08.12

イメージ
キツネノカミソリ
7月24日。朝からうだるような暑さの中、天然記念物の千葉県成東・東金食虫植物群落地を見に行った。日ざしを遮るものもない田んぼのまん中で、それでも3時間ほど満足な時間を過ごした。
「1年分の汗をかいた」などと女房と話ながら、まだ日が暮れるまでは時間があったので、近くの昭和の森に回ることにした。
「昭和の森」は千葉県の東金市にある自然の山を公園にしたもので、ふだんは行楽客が押し寄せるのだろう、大きな駐車場がある。その日は時間が遅かったためか、人はほとんどいなくて、車を降りると突然の蝉しぐれに圧倒された。
駐車場が閉まるまで1時間もなかったので、私はカメラを持って急いで谷底へ降りていった。目当てがあったわけではなく、谷底へ降りれば何か花が咲いているだろうと思っただけである。しかし、暗に相違して、枯れた菖蒲畑があるだけでめぼしい花は見つからない。その内に、閉園の案内が流れてくる。あきらめて帰りかけようとした時、菖蒲畑の向うの山の斜面に、赤い花らしきものがあるのに気付いた。近付いてみると、それは、赤い花を二つと、つぼみを一つつけた1本の「キツネノカミソリ」だった。
薄暗い林の下の草むらに、ぽつんとあるオレンジの花はなぜか衝撃的で、ドキドキさせるものがあった。時間を気にしながら、あせってシャッターを切り、周りを見渡すと4〜5メートル上にもう1本咲いている。滑り落ちそうになりながら薮をこいで近付き、シャッターを切ろうとしたら、なんということか!バッテリー切れ。
閉園のアナウンスにせかされ、駐車場までの急な坂道を汗だくだくになりながら登る。急に蝉しぐれが耳に入ってくる。
私の「キツネノカミソリ」との初めての出会いである。

◆  ◆  ◆

それまで、私は「キツネノカミソリ」を見たことがなかった。子供の頃、母とよく荷車を曳いて畑にいった時に、土手を登る坂道の草むらに、似たような花が咲いていたのを思い出す。それはカンゾウの花で、艶やかでどこか崩れた感じのする花であったが、キツネノカミソリにはどこか気品がある。カンゾウよりも少し小振りでシャープさがあり、園芸ものを見るような端正さの中にも、園芸ものでは得られない不思議な感動がある。
もう一度、出会ってじっくりと撮影してみたいと思っていたやさき、女房が素晴らしいニュースを手に入れてきた。
「泉自然公園で、お盆の頃にキツネノカミソリが満開になるらしい」
といったものである。
私はお盆まで待切れず、8月4日、予備のバッテリーと、128メガのメモリー1枚、64メガを2枚を持って、子供が遠足に行く時のような、なんとなくあせるような気持ちで、いそいそと出かけたのである。
そこには、私が期待していた通り、暑い夏の日ざし中、林の下の木漏れ日を受けて、キツネノカミソリが輝いていた。山の斜面や、道の横などいたるところに群生している。派手なのにいやらしくない。群生しているのに邪魔にならない。あるところでは、深い草の中にぽつんと一輪、またあるところでは圧倒する密度で、それぞれが夏の深緑の森と調和して、小気味いい光景を描き出している。
たかが野草であり、見なれている人はなんとも思わないのかもしれないが、私は涙が出そうになるくらい感動した。

◆  ◆  ◆

それにしても、感動を写真に現すことは難しい。私のデジカメは、ピントも露出もオートで、マニュアル設定ができないため、ピンぼけや標準的な露出ばかり。せっかく逆光でドラマチックな写真を狙ったのに、写っているのは、補正されてきれいに撮れた写真なんてことになってしまう。
結局、使えそうなのは数枚もなく、これこそ!と自慢できる写真は一枚もないありさま。こうして来年もまた、ドキドキ、いそいそと写真を撮りにいくのだろう。