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コウホネ
02.08.13
コウホネは、昭和20〜30年代、庄内地方のナマズやフナが棲んでいるような、底が泥地の川の浅瀬には、どこにでも自生していた。花の時期には茎をぽきぽき折って、聴診器だ、などと言いながら遊んだものである。耳に水が入ると親によく怒られたものだが、(実際、そのせいかどうか、私は中耳炎になってしまったが、)そのぽきぽき折る時の感触が気持ちいいので、「ポキ」と呼んでいた。

◆  ◆  ◆
イメージ
私が中学1年の夏休みに、兄弟で庭に、長辺が6〜7メートル、短辺3メートルほどの大きな瓢箪型の池を作った。次の年の夏には、家の横を流れる堰から水を引き、赤川から大きな石を拾って運び込み本格的な池に仕上げた。
池にコウホネを植えようといったのは私で、近所の高寺川から採ってきて植え、ついでにナマズや鯉も捕ってきて離した。それ以来、ナマズや鯉、フナ、ハヤ、祭りで買ってきた金魚、どこからか迷い込んできたメダカなどで池は賑やかになり、毎年、夏になるとコウホネの黄色い花が咲いた。
その池に異変が起きたのは、私が高校3年の頃である。農薬のためであった。堰からどじょうやハヤが消え、池の魚は死んでいった。かろうじて生き残ったのは、池を作った時にヤスで突いてつかまえた1尺5寸ほどの大きな鯉と、2〜3尾のナマズ、それとコウホネだった。
大学に入って、夏に帰省すると、池はポンプで循環させる噴水式になり、作り物の灯籠などをおいて、完全に観賞用の坪庭に変わっていた。コウホネは隅に追いやられ、中央には睡蓮が植えられた。大きな錦鯉が泳いでいる。父の趣味である。それでもコウホネは変わることなく、黄色い花を咲かせていた。
それから、結婚して女房を初めて連れていった夏も、お盆に子供を連れて帰省した時も、コウホネは咲いていて、心を和ませてくれた。
縁側から庭を眺めながら、子供達に池を作った時の苦労話などを話して聞かせた。
「これはポキというんだよ」と、聴診器にして遊んだことを子供に聞かせた。
子供を連れて赤川に釣りに行き、大きなニゴイとハヤを釣って、
子供が「魚が死んじゃうよ」といいながら、バケツを持って家に走って帰って、池に離したこともあった。
やがて、農業の機械化のために、「ポキ」の自生する川は、あるものはなくなり、あるものは道路になり、あるものはコンクリートで固められた。
そして、「ポキ」は川から姿を消した。
池を作ってから30年以上、子供を連れていかなくなってもう10数年も経っている。
父が死に、母が死んだ。
今年、私のその家は空家になり、私の帰るところはなくなってしまった。

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「コウホネ」という名前はずいぶん後から知った。「河骨」と書く、縁起の悪い名前である。「ポキ」という名前は愛着があるし、あの花には似合っているように思える。
帰るところがなくなったのはしょうがないとしても……
あの池はどうなっただろうか。
そして「ポキ」の花は今年も咲いているのだろうか。