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ネムノキ
02.08.18
私が子供の頃は、ネムノキを「ホウギ」と呼んでいた。理由はよく分からないのだが、花の形が、部屋を掃除する室内和帚に似ているからだろうか。当時、ネムノキは赤川の河原の薮の中にたくさん自生していて、川遊びの帰りに、その葉をとってよく遊んだ。

ホウギ、ホウギねぶれ(眠れ)
ねぶねば(眠らなければ)みなこぐぞ(葉をみんなこそげとるぞ)

と歌いながら、葉を上下に振る。すると葉が閉じるのである。
閉じない時もあって、その時はほんとに葉をむしりとってしまう。
閉じたらどうするか?たぶんそのまま捨てていたのだろう。

◆  ◆  ◆

その日は、おそらく夏休みで、兄たちと赤川に「雑魚しめ」にいった帰りだったと思う。私は小学2年か3年だった。そのとき、私は溺死しそこなった。
川に流されて、溺れそうになったことは何度もあるが、溺れる前を全く覚えていないのは、後にも先にもこの時だけである。
気がついた時、私は赤川の土手の草地に裸で寝かされていた。もう夕方で、陽は金峰山の向うに落ちていて、空は真っ赤な夕焼け。目の前にネムノキがあって、ネムの花がキラキラと輝いていたのがとても印象的だった。
私が起き上がると、兄たちが寄ってきて「大丈夫か」といった。私は何のことか分からずにぽかんとしていた。
後から聞いた話なのだが、赤川に鯉を捕りにいった帰り、中州から川を渡ろうとして流されたという。すぐ下流に深い淵があって、その淵にある沈礁に巻き込まれたのだ。兄たちがすぐ潜って引き上げ、土手に寝かしたのだが、20〜30分くらい気を失っていたらしい。ものすごく水を飲んでいたので、もうだめだと思ったということである。
私はそれほど気分は悪くなく、すぐ立ち上がることができた。その後は何事もなかったように、そばのネムノキの葉をとって、
ホウギ、ホウギねぶれ……
と歌いながら帰ったのを覚えている。
このことは、我々兄弟以外、親も知らない話で、今日まで暗黙の秘密として保たれてきた。親に知れたら、もう川にいけなくなるので……。当時、川に行くなということは、何もするなということと同じことなのである。

◆  ◆  ◆

そのことがあってから、私はネムノキの花をとてもきれいで、幻想的で、神秘的な花だと思うようになった。たしかに、マメ科とは思えない大木で、他にはあまり見られない葉をつけ、葉から突き出すように上を向いて咲く、茫々とした花は、誰が見ても幻想的に見えるのかも知れないが、夕焼けに輝くネムの花の、その時の光景が脳裏に残っていて、私にとっては、いまでも特別の花なのである。